発達障害のある子の問題行動に悩む方へ向けた記事です。
今日は、「環境調整」について。
具体例やコツをもとにお話します。
環境調整って何?
問題行動を減らすための環境調整とは、ひとことでいうと、
問題行動をそもそもできなくすること
です。
問題行動が起きてからやめさせる
というのは、ものすごく大変なことですが、
「そもそもできなくする」と、一気にいろんなことがラクになります。
たとえば、家の中の高いところに登る行動。
登っているお子さんに声をかけたり、抱っこしたりして下ろしても、
またすぐ登ってしまう。
あるいは、買い物に行った際にスーパーの商品を触ったり、店内を走り回ったりする行動。
その都度「やめなさーい!」と追いかけ回しても、どうにもならない。
そんな経験をおもちの方は多いのではないでしょうか。
そういったお子さんの行動を、やめさせるのはとても大変。
繰り返さないようにするのもとても大変。
だけど、その行動を「そもそもできなくする」ことができたら?
ね、ストレス激減するはずです。
それが「環境調整」です。
たとえばどうやるの?
環境調整が大事なのはわかった。
でも、どうやってすればいいのかな?
上記の例でいうと、
「高いところに登るのをやめさせたい」
→そもそも「高いところ」をなくす(高い家具を撤去する)
→そもそも「高いところ」を見えなくする(パーテーションなどで隠す)
「スーパーでの困った行動をやめさせたい」
→そもそもスーパー自体に行くのをやめる(ネットスーパーなどの利用)
といったようなことです。
イメージとしては、「言葉での注意が必要なくなる」と成功ですね。
「登らないで~」「走らないで~」と言わなくて済むようにするということです。
コツはある?
環境調整には、いくつかコツがあります。
端的にいうと、
「物理的に不可能」をめざすということになります。
視覚優位を利用する
発達に凸凹のあるお子さんの中には、視覚優位の方がたいへん多いです。
「見えているものに惹かれやすい」ということです。
逆に考えると、「見えなくなると惹かれなくなる」場合があります。
隠されたものを探す発達段階を超えていても、
自分の視界から消えるととたんに執着や興味を失う、ということもあるのです。
(もちろん、こだわりが強い場合は隠されても探し続けますが)
「パーテーションや布で問題行動の元となるものを隠す」というのは、
とてもかんたんにできる環境調整なので、ぜひ試してみてください。
最初は小さく試す
環境調整が大事だからといって、いきなり高価なグッズを買い揃えたり、
部屋のレイアウトを大幅に変えたりということは避けましょう。
往々にして、環境調整は1度ではうまくいきません。
お子さんの様子や反応を見ながら、試行錯誤し、微調整していくことが大切です。
引き出しを開けて中のものを全部出すことがこだわりになっているとします。
いきなり引き出しが開かなくなるグッズを購入して貼り付けるのはちょっと待って。
まずは一番気になる引き出しを一つだけ選び、中身を空にしてみる。
そしてお子さんが開けたときの反応を見ます。
それによって、次の一手を決めていくのです。
「試してみることに失敗はない」という言葉があります。
小さく試して、小さく軌道修正を繰り返してみましょう。
心理的、経済的、手間的負担も減ります。
いっときの不便は我慢する
環境調整って、不便なんです。
扉や引き出しを開かないように細工したり
家具を減らしたり
大人としては、必要があって設置しているものを、撤去したり使えなくしたりするわけですから、
当然不便が生じます。
そんな不便を我慢するか
それとも、お子さんの後を追いかけ回して問題行動をその都度やめさせるか
ある意味「究極の選択」です。
ただ、環境調整に成功してしまえば、
その問題に関してはお子さんを注意する必要がなくなります。
お子さんから見れば、
大人から注意される(叱られる)という経験をひとつしないで済むということになります。
何かと叱られがちな発達障害のお子さんにとって、このことは大事ではないでしょうか。
おわりに~環境調整は、自分自身にも使える
「環境調整」は、一部の人だけのためのものではありません。
発達に凸凹があってもなくても、子どもでも大人でも、有効な手立てです。
たとえば、お菓子がやめられない、とか、お酒がやめられない、とか
そういう悩みはありませんか?
(私のことです)
「食べてはいけない」「飲んではいけない」と意志の力を使うより、
・そもそも、お菓子やお酒を家に置かない
・視界から消す(見えないところにしまう)
・出すのに手間がかかるところにしまう(戸棚の一番上など)
といった環境調整をしてしまったほうが何かとラクです。
環境調整をうまく使って、ストレスを減らしましょう。